keeley
建設的な議論のためには言葉が必要である。
過去のエントリーではアーキタイプについて定義しなおし、分類することを試みた。
今回はなお、広い範囲での言葉を定義していく。
(あくまでここに記載される言葉は、私が定義したものですでに使われている言葉の意味とはニュアンスが異なることがあることに留意していただきたい)
アーキタイプはデッキを作る際の指標だ。デッキを作る際に勝利を求めて構築を行えば、必ずどこかのアーキタイプにそった構築になるはずだ。例えば、君がリソースを拡大させつつ、中マナ域の脅威を連打する事で勝ちを目指すのであれば、それはミッドレンジに分類される。また、アーキタイプは使用出来るカードに左右されない。極端に言えばミッドレンジは10年後のカードプールでもミッドレンジである。
・デッキタイプ
デッキタイプはその名前でそのデッキのおおよそのリストをイメージ出来るものだと思えば良い。黒単ヘルボロフや天門などが存在する。名称にはアナカラーデッドゾーンなど『色+核となるカード名』となる場合が多い。デッキタイプは時代と共に変遷する。例えば天門はヘブンズゲートが禁止になれば存在出来なくなるし、新しいカードが出ればそれを核としたデッキタイプが誕生することも少なくない。
また、1つのデッキタイプが1つのアーキタイプに対応しているとは限らない。あるデッキに対してはミッドレンジでも、ある他のデッキに対してはクロックパーミッションの動きをするなど1つのデッキタイプが複数のアーキタイプを内包している場合が多々ある。
・キャスト
唱える事。ギャザリングではクリーチャーを召喚するのも魔法であるので、総じてカードをプレイする事。
・プラン
戦略的選択肢。取る意味が全くない選択肢はプランとは言わない。単純に同条件でアドバンテージの観点で劣る選択肢はプランではなく、それを選択した場合はプレイミスになる。選択してもプレイミスとは呼べないもので、状況によって選択する価値のあるものだけをプランと呼ぶ。
・ライン
コストとは違い、マナリソースの観点から見た時間的フェイズを表した言葉。例えば2→4→6で動くデッキの4ラインのカードは2コストの《フェアリーライフ》や4コストの《フェアリーシャワー》、3コストの《オチャッピィ》などが考えられる。また、4ラインの動きとして《青銅》+《未来設計図》などといった複数のカードを使った動きも表現する事が出来る。
・スターティングハンド
初手。単純に開始時の5枚を指す場合もあれば、初動をキャストするターン数までに引ける枚数を含む場合もある。例えば《フェアリーライフ》や《トップギア》などの2ラインのカードが初動の場合は、先行なら6枚をスターティングハンド、後攻であれば7枚をスターティングハンドとして指す。
・トップカード
山札から引いてくるカードの総称。
ゲーム中は常に公開領域のカードだけではなく、自分と相手のトップカードを含む盾や相手のハンドを意識してプレイして行かなくてはならない。
・リソース
資源。自分の使えるもの、駒。ゲームに置いて、リソースがあればあるほど取れる選択肢は多くなる。種類としてはマナ、ハンド、ボード、墓地などが挙げられる。dmはハンドリソース5枚から毎ターンのトップドローを加えてリソースを拡大して勝利条件を満たすゲームである。
・オープニング
序盤のこと。オープニングではできる事が限られ、相手によるこちらのプランへの干渉や影響が少ない、またはほぼない為デッキごとに定型化されている場合が多い。例えば2ラインで《フェアリーライフ》を打ち、4ラインで《フェアリーライフ》or《フェアリーシャワー》or《パクリオ》をキャストするという具合だ。オープニングが安定しているとミドルゲームを優位に進めやすい。
・ミドルゲーム
ゲームの中盤。互いにリソースが拡張しあい、それに応じて取るプランを選択して行かなければならない。ミドルゲームゲームでリソースを伸ばしあい、奪い合い、そのデッキの持つある到達点へ達した時、ゲームはエンディングへと移行する。
・エンディング
ゲームの最終盤面。拡大したリソースを使って勝利条件を目指すフェイズ。ビートであれば広げたボードリソースでプレイヤーを殴りに行く。ビマナであれば大量のマナリソースを使って巨大な脅威を叩きつける。エンディングを迎えたゲームはほとんどの場合ミドルゲームに戻る事はない。ビートプランであれば、そのまま殴り勝つか、大量に与えたハンドリソースで逆転されるかの2択になるからだ。それ以外の場合はフィニッシュ手段が勝利に直結する事が多いのでそのままゲームエンドする。
・フォーマット
ゲームの形式。対戦フォーマットであれば1本先取かマッチゲームが主流。トーナメントフォーマットならば通常は予選の形式(全何回戦で何勝すれば確定進出なのか)、本戦何回戦からマッチゲームなのか、チーム戦なのか個人戦なのか、制限時間とタイムアップの場合の勝敗の処理などが含まれる。・アベレージ
平均。デッキのもつ強さ弱さはアベレージで語られるべきだ。レアケースに陥った時のためのメタカードなどはアベレージで考えれば弱いことは一目瞭然だ。極端なレアケースのケアに枠を1つ使うなら、デッキの安定性を上げられるカードにそのスロットを割いた方が勝率に直結する。
・有利対面、不利対面
100ゲーム単位の長期の勝率平均をとった時に有利がつく対面なのか、不利がつく対面なのかである。しかし6割程度の相性差であるならマッチゲームでも有利不利の壁を超えて結果が入れ替わることも多い。フォーマットが1本先取なら8割、マッチゲームなら7割で絶対有利対面と呼べるか。
・アップスイング
上ブレ。確率の絡むゲームは10試合単位の短いゲームスパンでは、期待値以上に勝てるスパンが必ず存在する。ここはプレイヤーが触れることの出来ない領域である。調整中にアップスイングに陥ると不利対面に対して有利がついていると勘違いしてしまうことがあるので注意が必要だ。調整においては過大評価も過小評価もしてはいけない。勿論トーナメントシーン本番に起きる分についてはいつでもwelcomeだ!
・ダウンスイング
下ブレ。アップスイングの真逆で短いスパンで本来の期待値勝敗より大幅に勝率が悪くなるスパン。コレも運の要素でありしょうがないもの。ただしダウンスイングに陥っている時にそこから抜け出そうとして数学的に正しいプレイを間違ったプレイに変えてしまい、フォームを崩し、長期的な勝率まで下げてしまうプレイヤーがいる。運が悪くて負けが混んでる時にプレイスタイルを崩すのは弱いプレイヤーだ。
・ティルト
あったまり。感情が揺さぶられて間違ったプレイをしやすくなっている状態。基本的にはダウンスイング中やトップカード1枚で逆転された時などこちらが理不尽に晒されている時に起こりやすい。しかしアップスイング中にも起こる。例えば、調子がいい時に踏まないとタカを括って他に有効なプランがあるのにジャスキルしに行ってしまった時などだ。カードゲームはメンタルのゲームでもある。感情がプレイに出るようでは三流もいいとこだ。
視点のこと。対戦中のパラダイムで語られるのはプレイングスキル1点であるが、対戦から一歩下がってみると、そこにはデッキ調整、構築のパラダイムが存在する。そこから更に下がってみると、今度はデッキ選択、環境読みのパラダイムが存在する。思ったより勝率が上がらない場合はより高次のパラダイムにシフトして考えると簡単に解決するケースも多い。
・ミクロ
局所的なパラダイム。dmでミクロゲームと言えば卓に座って行う通常のゲームのことを指す。初心者は同じリストを握ってプレイングを磨くことから始めるので、ミクロゲームからマクロゲームへとパラダイムシフト出来ると中級者と呼べるのでは無いだろうか。
・マクロ
大局的なパラダイム。dmでマクロゲームというと卓外で行われる勝利への研鑽だ。例えば基本的なロジックに基づく勝利へのプロセス、環境読みや情報収集、デッキ選択や構築、調整。はたまたカード収集の手段や調整相手の確保なんかもマクロゲームに含まれる。個人的にはミクロゲームは数学的アプローチを求めれば必ず答えが存在する。才能がある人は直感的に最適解を選択することが出来るが、才能が無い人でも経験や複雑なプロセスを踏むことで必ず答えを出せる領域まで時間と労力がかかっても到達する事が出来る。才能と闘う覚悟と備えが無い奴は自分に才能が無いことを嘆く。
・マストカウンター
絶対最優先処理案件。他の何を差し置いても処理しなければいけないもの。これを処理できないとゲームが大きく敗北に傾き、そのままゲームエンドに持ち込まれることも多い。
・レスポンス
自分のアクションに対する相手の反応、対応アクション。自分が脅威的なクリーチャーをキャストしたならば次のターンの相手のレスポンスとして考えられるのは、除去をする、ブロッカーを立てる、自分の動きを優先して脅威を立て返すなどが挙げられる。アタックであれば各種NSやST、革命0トリガーなどが考えられるだろう。プランを実際にアクションに移す前にそれに対するレスポンスを想定するのが基本となる。
・デッドカード
死に札。現在のゲーム中の状況において有効では無い札。dmはハンドのデッドカードをマナに埋めることが出来るためオープニングからミドルゲーム初期まではデッドカードが腐りにくい。メガパーミッションなどの純正コントロールでは相手のデッドカードを増やして相手の有効札を0にするのが目的となる。
・アウツ
非公開情報の内の有効札の枚数。例えばトップドローであれば欲しいカードが引ける確率は、アウツ/非公開情報の総枚数である。5枚の盾をブレイクされる時にはクロックなどの有効トリガーの見えてない枚数がアウツになるので、(1−アウツ/非公開情報の総数)^5が、概算の相手がトリガーを踏む確率となる。
・スキル
技術。経験と努力で完全に補完できるものに関してはスキルゲームの範囲である。にも関わらず、スキルが無いことを運のせいにする勘違いしているプレイヤーも非常に多い。少なくとも私はミクロゲームでのプレイヤーの選択は全てスキルゲームの範疇であり、数学的アプローチをすれば必ず解が存在すると確信している。
・センス
ゲームに対する感覚。才能がある人は直感的に最適解を瞬時に出せるが、それは本人がロジックを理解しているわけでは無いので、dmというゲームを誠実に極めようとした時に限れば、私は全く必要の無いものだと思っている。しかしながら、ミクロゲームからマクロゲームにパラダイムシフトすると答えが出ない問題が度々浮上する。
代表的な例が環境読みである。環境母数がしっかりと定義されていればデッキセレクトにも解は必ず存在する。しかし、環境は実際に蓋を開けてみないとわからない一種のシュレッティンガーの猫のようなもので、その予想は神のみぞ知る者である。しかし、センスを持っている人は時として環境母数をほぼ狂いなく言い当てる時がある。こればっかりはdmをしてて他人をうらやむ唯一の瞬間だ。長く経験を積んでいればある程度近似する事は出来るが…。このように多数の意思決定が絡むケースや非常に複雑な確率が絡み合うケースは人間の脳は愚か、時にはコンピュータの演算力でさえ遥かに超えてしまうことが度々発生する。そういった領域に対してのみ、私はセンスという言葉を使うようにしている。
・テル
癖。人間は様々な癖を持っている。その1つがボディーテルだ。例えばいいカードを引いた時に顔に出るプレイヤーがいる。もしその情報を得られてしまったら、ハンデスされてしまう可能性が上がるので不利になってしまう。他にも《ハヤブサマル》を持っていて、相手がアタックを考えている時に、チラチラハンドをみてしまうなどが考えられる。
テルは行動の他にも言動の端々やプレイの傾向なんかにも現れる。極力無くす事が求められる。
・ルーティン
人は同じ動作を繰り返す事で、精神を一定に落ち着かせ、正常なパフォーマンスを行うことが期待される。また、ボディーテルを隠すのにも一役買っている。1番代表的なルーティンがいわゆるハンドシャッフルである。しかし過度なハンドシャッフルは嫌われる傾向があるので、例えば長考の際は、″所定の場所にハンドを置き手を組んで口元を隠す″″指を2回タップする″など自分に合ったルーティンを作ることをお勧めする。
plan.do.check.actionのサイクル。主に調整やプレイングの練習に用いる。ただ漠然とシュミレーションを行うのではなく、何を持って行うかを明確に計画し、実行し、反省点や上手くいった点を発見し、修正する為も行動を考える。ただ、ゲームを反復するだけではなかなか成長できない。必ず1試合ごとに、何か発見や気付きを小さな事でも良いから見つける事が出来ると一歩ずつ着実に成長できるだろう。
人に何かを教えたり、複雑な議論を交わす場合にはどうしてもボキャブラリーが必須になってくる。今日ここに記した言葉は一言で日本語で言い換えられるものばかりではあるが軽く説明をつけるだけでどれも3行以上の意味を持つ。会話の中でなんとなく使われている言葉をキチンと定義し直して、正しく理解することは現状のレベルアップに留まらず、未来のレベルアップに投資することに他ならない。